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2023年5月 1日 (月)

映画「レッド・ロケット(Red Rocket)」

Red Rocketアナモレンズを装着したiPhone5Sで撮ったという低予算映画「タンジェリン」で初めて知ったショーン・ベイカー(Sean Baker)監督。つい最近のようですが、2015年の作品だったのですね。まぁiPhone5Sですからずいぶん昔です。

続く「フロリダ・プロジェクト」も主な出演者は素人でしたが、モーテルの管理人役にウィレム・デフォーが起用され、なかなか良い味を出していました。

そして本作、重要な役に新人や素人をキャスティングしている点は変わりませんが、主役にサイモン・レックス(Simon Rex)とブリー・エルロッド(Bree Elrod)という、それなりにキャリアのある俳優を据えているところに目新しさを感じます。とはいえ、社会の底辺で生きる貧しい人たちにフォーカスしながら、明るくポップな映像で悲壮感を漂わせない作りは今まで同様です。

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映画の始まりはサイモン・レックス演じるマイキーが故郷のテキサスシティに戻ってくる場面。高校卒業後、L.A.でポルノスターになり、一時はそれなりに成功していたようですが、落ちぶれた上に何か問題を起こしてL.A.にいられなくなったのです。ブリー・エルロッド演じる別居中の妻レクシーの家を訪ね、居候させてくれないかと頼み込みます。

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すぐそばに石油精製所が見える小さな平屋で母親と暮らすレクシーも豊かではなさそうですが、他に行く当てのないマイキーは彼女に頼るしかないようです。何しに来たの?と怪訝顔のレクシーと、何が欲しいの?と不審げな母リルに対し、数日間の寝床が必要なんだと懇願し、賃料を払う約束をして受け入れてもらいます。

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当初は就職活動に励みますが、経歴に長いブランク、つまりポルノスターだった期間があって採用して貰えません。結局は闇稼業ということで、マリファナの売人になって賃料を稼ぐことにします。

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その稼いだカネで奢るからといって、リルとレクシーを連れて行ったのがドーナツ・ホール(Donut Hole)。ロードサイドにあるドーナツショップです。ところが、どこまでいってもクズ男のマイキー、その店の若い店員レイリーに一目惚れします。一旦は店を後にするのですが、その後、一人で店に行っては彼女を口説き、打ち解けた彼女につけ込んで、店に来る石油精製所の労働者たちにマリファナを売り始めるのです。

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レクシーとヨリを戻しつつあったマイキーは、次第にレイリーとも親密な関係になっていきます。自分のことをストロベリーと呼んで欲しいと言うレイリーは、あと3か月で18歳になるという田舎の少女らしく、L.A.でエンターテイメントビジネスをしていたというマイキーに興味津々です。すぐに化けの皮が剥がれ、ポルノスターだったことがバレますが、それでも大都会L.A.への憧れと、マイキーの調子の良さや彼がくれるマリファナに取り込まれてしまいます。

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そこでマイキーが思い立ったのは、ストロベリーをL.A.に連れて行ってポルノ女優としてデビューさせようというアイデア。ボーイフレンドのナッシュと別れさせ、テキサス訛り(Texan drawl)を直すように言い、バラの花束を捧げて彼女をその気にさせます。

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もちろん、そうそう上手くは運びません。マイキーは所詮クズ男、レクシーが言うところの"宿無しのポン引きのヒモ野郎(Homeless Suitcase Pimp)"ですから、クズに相応しい運しか巡ってこないわけで、何度もトラブルに見舞われながらショーン・ベイカーらしい物語が展開していきます。

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ポップな映像とよく馴染む脳天気な音楽もこの監督の特徴です。前作「フロリダ・プロジェクト」ではクール・アンド・ザ・ギャングの“Celebration”が効果的に使われていましたが、本作ではインシンクの"Bye bye bye"が何度も流れます。中でもストロベリーが弾き語りするシーンは見せ場の一つでしょう。

そのストロベリーを演じたのは、本作が初の長編映画という新人のスザンナ・サン(Suzanna Son)。芸術大学でクラシック音楽を専攻していたそうで、デビュー前はYoutubeで音楽活動をしていたそうです。

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ドーナツ・ホールのオーナー、ミス・ファン役は「タンジェリン」でもドーナツショップの店長役だったツォウ・シンチン(Shih-Ching Tsou)。前作「フロリダ・プロジェクト」にも香水売りの元締め役で出ていましたが、出演するだけでなく、実は3作ともプロデューサーも務めています。

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また、あまりにもそれらしい風情を滲ませるので、女優ではないだろうと思って観ていましたが、やはり母親リル役はブレンダ・ダイス(Brenda Deiss)という地元の人だそうです。残念なことに去年、脳卒中で亡くなったそうですが、享年60歳ということで意外に若くて驚きました。

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2016年の米国南部を舞台にしたこの映画、TVでトランプの演説が流れていたり、隣人が軍歴を詐称したり、銃を携えて出てくる女性がいたり、その女性がニュースキャスターだったりと米国のダークな面を織り込んで含みをもたせています。元ポルノ俳優が主人公の映画、というと気持ちが退けるかも知れませんが、いろいろと楽しめる映画だと思います。

公式サイト
レッド・ロケットRed Rocket

[仕入れ担当]

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