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2023年7月17日 (月)

映画「大いなる自由(Große Freiheit)」

Große Freiheit Bunkamuraの長期休館に伴い、映画館は渋谷東映プラザ内に移転して“Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下”として営業を始めました。先月中旬からマギー・チャンやミュージカル映画の特集をしていましたが、本作は移転後初の新作映画、それもBunkamura初の自社配給作品という力の入った一本です。

まずは新しい劇場の設えですが、席数が増え、スクリーンの位置が高くなったおかげか、以前より観やすくなりました。中ほどより後ろなら前席に座高の高い人が来てもあまり問題ないでしょう。ただロビーはぐっと狭くなり、柱位置の関係もあってちょっと使いにくい感じです。シネマカリテをさらに狭くした感じといえば良いでしょうか。

ロビーに窓がないので外光が入らず、それを逆手にとってバーっぽいインテリアにしていますが、狭いのでこのような暗めの演出で正解なのかも知れません。1階からの縱動線はまさに角川シネマ有楽町で、文化の香りというよりサブカルっぽさを感じさせます。エレベーターの効率があまりよくないので、混雑が予想される場合は早めに行った方が良いでしょう。

さてこの映画「大いなる自由」ですが、タイトルは原題、英題(Great Freedom)とも同じ意味で、性的な自由を求めて何度も投獄される同性愛の男性を描く物語です。

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その背景にあるのはドイツの刑法175条。1871年に制定されたドイツ帝国法典刑法175条で同性愛を刑事罰の対象にして以来、ナチス政権時代を経て1994年まで有効だった法律です。

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ご存じのようにナチス政権下のドイツでは、ユダヤ人や政治犯(反ナチ分子)だけでなく、同性愛者やロマも強制収容所に送り込まれました。同性愛者である主人公ハンスはナチス政権時代に投獄され、終戦後も連合国軍によってそのまま刑務所に移送されます。なぜなら同性愛はドイツ国内法のみならず、英国(映画「イミテーション・ゲーム」で観たとおり)や米国でも違法だったからです。

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刑期を終えて釈放されても、すぐに同性愛者たちの出会いの場である公衆便所を訪れて摘発されます。警察は公衆便所に隠しカメラを仕掛けて監視していたそうで、本作は西ドイツのお話ですが、まるで東ドイツの監視社会を扱った映画「善き人のためのソナタ」のようです。

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映画は時代を前後しながら進んで行きますが、物語の軸になるのは、殺人犯として長く服役しているヴィクトールとの関係。当初、ヴィクトールは同性愛者であるハンスを毛嫌いますが、彼の腕に番号の入れ墨があるのを見て強制収容所にいたことを知ります。そして同情心を抱き、番号が見えないようにその上に入れ墨を入れてやる約束をします。

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刑務所内の縫製工場で働くハンスがミシンから抜いてきた針を使って入れ墨をするのですが、看守に新しい入れ墨を見とがめられ、隠した針を見つけられてしまいます。看守は、入れ墨だらけのヴィクトールの仕業だと見抜いて問い詰めるのですが、ハンスは自分でやったと言って口をつぐんでしまいます。罰としてハンスは懲罰房に入れられるのですが、おかげでヴィクトールとの間に緩い信頼関係が芽生えます。

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出所してもすぐ刑務所に戻ってくるハンスと、主のように居続けるヴィクトール。ハンスは刑務所内で知り合った同性愛者と付き合い始めますが、悲劇的な終わりを迎え、ヴィクトールも仮釈放の面談に呼ばれながら、ドラッグを我慢できずチャンスをふいにします。長い年月をかけ、何度も再会することで、異質な二人が互いに理解を深めていくことになります。

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そのハンスを演じたのは「ハッピーエンド」「未来を乗り換えた男」「希望の灯り」「水を抱く女」のフランツ・ロゴフスキ(Franz Rogowski)。いつの間にかドイツを代表する俳優になりましたが、本作でも柔和な性格でありながら、信念を曲げないシンの通った主人公を情感豊かに演じています。

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対するヴィクトールを演じたのはゲオルク・フリードリヒ(Georg Friedrich)。戦争中は一人も殺さなかったのに、というセリフに現れているように、激しさと優しさを併せ持ち、ときおり寂しさをにじませる男という役どころがしっくりきます。

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監督はこれが長編映画2作目というオーストリア出身のセバスティアン・マイゼ(Sebastian Meise)。撮影はセリーヌ・シアマ監督の初期の作品を撮っていたというクリステル・フルニエ(Crystel Fournier)で、本作でヨーロッパ映画賞の撮影賞を受賞しています。ロケ場所は旧東ドイツの町、マグデブルグ(Magdeburg)に残っていた旧い矯正施設(Ehemalige Justizvollzugsanstalt Magdeburg)だそうです。

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公式サイト
大いなる自由

[仕入れ担当]

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