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2023年8月14日 (月)

映画「さらば、わが愛 覇王別姫 4K(Farewell My Concubine)」

Farewell My Concubine つくづく素晴らしい映画だと思いました。言わずと知れたチェン・カイコー(陈凯歌)監督の不朽の名作ですが、このたび4K版に蘇り、劇場公開されています。

中国の激動の時代を背景に2人の京劇役者の半生を描いていくこの物語。中国現代史の側面から観るのもよし、伝統文化の観点から観るのもよし、二人の俳優を軸に繰り広げられる愛憎劇として観るのもよし、さまざまな楽しみ方ができる映画ですが、随所に解釈の余地を残して作られていますので、改めて観るとまた新たな発見があると思います。

映画の始まりは、チャン・フォンイー(张丰毅)演じるトァン・シャオロウ(段小樓)とレスリー・チャン(張國榮)演じるチョン・ティエイー(程蝶衣)がどこからか歩いてきて、スポットライトを浴びて踊り始める場面。エンディングと呼応するシーンですが、あっという間に映画の世界に引き込まれていってしまう素晴らしい出だしです。

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時は1924年、子連れの女が街頭で子どもたちが演じる京劇を観ていると、劇団の少年の一人が逃げ出して劇がめちゃくちゃになってしまいます。怒る観客たちを鎮めようと、別の少年が頭でレンガを割ってみせて喝采を浴びるのですが、その少年が通称シートウ(石頭)で後のシャオロウです。

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京劇を観ていた女は遊女で、自分には育てられないと思ったのか、劇団に子どもを託しに行きます。ところがその子どもが多指症で入団を断られるのですが、すぐさま雪がちらつく路上で子どもの6本目の指を切り落とし、改めて劇団に連れて行きます。その子どもがドウヅ(豆子)で後のティエイーとなります。

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ドウヅは遊女の子どもだと虐められますが、身体が大きなシートウが味方になってくれたおかげで、なんとか劇団に居場所を見つけます。それでも練習は辛く、あるとき、ライヅー(癞子)と一緒に逃げ出します。そのとき街で観たのが京劇「覇王別姫」。二人はその素晴らしさに感動し、役者になるべく劇団に戻るのですが、そこではグアン師匠(关师傅)が、ライヅーとドウヅが逃げるのを見逃したといってシートウたちを折檻しています。ドウヅは自ら進み出て折檻を受けますが、おじけづいたライヅーは首を吊ってしまいます。

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劇団は興行師の那坤の手配で、地元の名士である宦官の張翁(张公公)の屋敷に赴き、シートウとドウヅが「覇王別姫」の覇王(項羽)と虞姫(虞美人)を演じるのですが、そのとき二人が屋敷内で見た一本の剣がこの物語を象徴するアイテムになります。その後、張翁に気に入られたドウヅは彼の部屋に連れて行かれ、シートウは何があったか薄々気付きながら何も言いません。その帰路、ドウヅは捨て子を拾って劇団に連れ帰ります。それがシャオスー(小四)です。

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1937年。大人になったシートウとドウヅは、それぞれシャオロウとティエイーと名乗り、京劇の人気役者になっています。ティエイーは相変わらず甲斐甲斐しくシャオロウに尽くしていますが、大物気取りのシャオロウは女郎屋でのもめごとをきっかけに遊女のジューシェン(菊仙)と結婚してしまいます。これによってシャオロウを頂点とした三角関係のような状態になるのですが、そこに京劇界の名士であり、男色家の袁世卿(袁四爷)が絡んでさらに複雑な状態になります。

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ここまでが登場人物たちの関係ですが、盧溝橋事件が勃発し、彼らを取り巻く状況が大きく変わり始めます。一旦は日本の支配下におかれますが、日本の敗退によって国民党が政権を掌握、そして国共内戦の末に共産党が中華人民共和国を建国し、文化大革命が始まるという激動の時代になだれ込んでいくのです。世の中の価値観が180度転換し、登場人物たちもそのたびに振り回されることになります。

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社会制度の変化による理不尽は多々ありますが、シャオスーが共産党に感化され、京劇を労働劇に変えるように訴えたことは、他の登場人物たちにとって理不尽の極みでしょう。名士だった張翁や袁世卿、日本軍将校の青木三郎など過去の人々は消え去り、シャオロウも自己批判を強いられたことで密告社会に与することになり、彼らの信頼関係も崩れ去っていきます。

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結局のところ変わらなかったのは、遊女の子どもと蔑まれ、その後も京劇への思いから遊女まがいのことを受け入れてきたティエイーと、遊女の出であるが故の逆境に耐えてきたジューシェンだけというあたりが象徴的です。

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約30年前の初公開時にこの作品を観たときも、とても感動して原作まで買い求めたのですが、改めて観るとそのときは気付かなかったことや、理解できなかったことが見えてきます。たとえばレスリー・チャンが演じるティエイーがシャオロウに執着する理由。以前は異性愛者に対する同性愛者の思慕だと思っていましたが、実は執着しているのはシャオロウが演じる覇王であり、その相手役である虞姫になりきることがティエイーの人生すべてだったことに気付きました。

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90年代にはGender fluidという言葉を知りませんでしたが、当初は性的に揺らいでいたティエイーが、性を超越し、虞姫としてしか生きられなくなった末、衰退していく京劇と心中する物語なのでしょう。何度も京劇「牡丹亭」に触れる理由もわかりました。

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対するジューシェンは現実的で地に足のついた存在ですから、レスリー・チャンの無垢な美しさと、コン・リー(鞏俐)の妖艶な美しさを対峙させる展開は必然です。また捨て子であるシャオスーが最終的にティエイーと同じ轍を踏んでしまうことにも納得がいきます。他に自らを支えるものを持たないという意味で同種の人間なのです。

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それにしてもレスリー・チャンとコン・リーが競演するシーンには圧倒されますね。どの場面を切り取ってもポスターにできるような映像が続きます。子ども時代のドウヅを演じたイン・チー(尹治)やティエイーに反旗を翻すシャオスーを演じたレイ・ハン(雷漢)も美形ですが、レスリー・チャンの可憐なたたずまいには遠く及びません。惜しい人を亡くしたものです。

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公式サイト
さらば、わが愛 覇王別姫 4K

[仕入れ担当]

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