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2023年8月 7日 (月)

映画「シモーヌ フランスに最も愛された政治家(Simone, le voyage du siecle)」

Simone, le voyage du siecle 彼女の名に因んで後にヴェイユ法と呼ばれるようになる、人工妊娠中絶の合法化を勝ち取ったフランスの政治家シモーヌ・ヴェイユ(Simone Veil)の生涯を描いた映画です。

アニー・エルノーの小説を映画化した「あのこと」で観たように、ヴェイユ法が可決される前のフランスでは違法な堕胎が横行しており、それによって命を落としたり、後遺症が残ったりする女性が大勢いました。とはいえ望まない妊娠をした女性にとって、産むという選択は後の人生を大きく制約することになりますので、アニー・エルノーのように危険を承知で闇医者に身を委ねることになります。

驚いたことに、フランスではその少し前まで避妊や中絶を行うことはおろか、それに関する情報提供まで違法だったそうです。1967年に経口避妊薬の使用が合法化され、1975年に人工妊娠中絶が合法化されたことで、初めて女性の自己決定権が守られるようになります。

男性が大多数だった当時のフランス国会にこの議案を提出し、可決まで持ち込んだ女性政治家というだけで十分に偉大ですが、それだけではありません。シモーヌはアウシュビッツからの数少ない生還者で、パリ政治学院で学んで治安判事となり、刑務所の改善に取り組んだり、父権から親権への移行を進めたりしています。ヴェイユ法可決後は、女性で初めて欧州議会議長に選出されて欧州統合を進め、晩年は設立されたばかりのショア記念館の館長を務めました。

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当然、フランスでは誰もが知る存在ですので、映画もそれを前提に作られています。具体的にいうと、強制収容所での体験にその後の人生を織り込んでいく作り。晩年のシモーヌが自伝を執筆しながら過去を振り返るという設定で、細かい説明がないまま時間軸が前後しますので、彼女に関する基礎知識ゼロで観ると混乱するかも知れません。

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映画の始まりはテーブルにレモンが置かれたリゾートでシモーヌが書き物をしている場面。のどかで平和な風景ですが、彼女のノートに記されているのは、ナチス・ドイツの台頭によりフランスがヴィシー体制となり、ユダヤ人が弾圧されていた時代の記憶。彼女の一家はパリからニースに逃れていましたが、母イヴォンヌ、姉マドレーヌと共に捕らえられ、パリ郊外のドランシー収容所に送られます。

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親衛隊に対しては18歳だと偽るように入れ知恵されていましたが、収容時のシモーヌはバカロレアに合格したばかりの16歳。1944年4月にアウシュヴィッツに移送され、7月には比較的労働が軽かった近隣のボブレクに移されます。その後、ナチス・ドイツの敗色が濃厚になり、いわゆる死の行進でドーラ収容所、ベルゲン・ベルゼン収容所へと移動させられるのですが、母はチフスに罹患して1945年4月の解放時までもちませんでした。

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フランスに戻ったシモーヌは、パリ大学で学んだ後にパリ政治学院に進学し、1946年10月には政治学院で知り合ったアントワーヌ・ヴェイユと結婚します。すぐに子どもが生まれたことと、夫がドイツ赴任になったことから、しばらく専業主婦の暮らしをしていましたが、育児の合間を縫って勉強し、司法試験に合格します。

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治安判事となり、1957年から司法省に勤務して刑務所の改革などを手がけ、ポンピドゥー政権で要職を務めた後、1974年、ジスカール・デスタン政権下でシラク内閣の厚生大臣に任命されます。ここで人工妊娠中絶の合法化に取り組むことになるのですが、国会での舌戦や彼女の名演説などがこの映画で再現されています。

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法案に反対する人たちの主張はキリスト教的な倫理観で彩られていますが、その背後には男のエゴイズム、ミソジニーが透けて見えます。男性多数の議会でこの法案を強く押し通し、成立させた彼女の手腕は驚異的といえるでしょう。ウジェーヌ・クロディウス=プティ議員のような敬虔なカソリック教徒にまで肯定的な意見を述べさせ、最終的に賛成284票、反対189票で可決させています。

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こういったシモーヌ・ヴェイユの活躍を、強制収容所の時代をフラッシュバックさせながらみせていく本作ですが、若い頃のシモーヌをレベッカ・マルデール(Rebecca Marder)、その後をエルザ・ジルベルスタイン(Elsa Zylberstein)が演じています。政治家になった後のことは多くの人に知られていますので、ジルベルスタインは本人に似せるため苦労したようです。マルデールは「黄色い星の子供たち」にも出ていたそうですが、本作でも番号の入れ墨と共に黄色い星が象徴的に登場します。

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アントワーヌ役はオリビエ・グルメ(Olivier Gourmet)。ダルデンヌ兄弟の作品を始め、多数のフランス映画で脇役を務めている人ですね。その他、シモーヌの母イヴォンヌ役でベテランのエロディ・ブシェーズ(Elodie Bouchez)が出ています。監督は「グレース・オブ・モナコ」のオリヴィエ・ダアン(Olivier Dahan)です。

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公式サイト
シモーヌ フランスに最も愛された政治家

[仕入れ担当]

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