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2024年1月29日 (月)

映画「ザ・ヒューマンズ(The Humans)」

The Humans 2016年のトニー賞を受賞した舞台劇の映画化作品です。劇作家のスティーブン・カラム(Stephen Karam)が自ら映画監督も務めました。

主な登場人物はペンシルベニア州スクラントン(Scranton)で暮らしていたブレイク家の面々。祖母と両親は地元に住んでいるようですが、長女はN.Y.のロースクールを卒業して現在はフィラデルフィア中心街にある法律事務所勤務、次女は音楽家を目指してN.Y.で暮らしていて、先ごろアジア系のパートナーとチャイナタウンの老朽化したアパートに引っ越したばかりのようです。

物語の舞台となるのはそのアパートで、どうやら次女のブリジッドが新居のお披露目を兼ねて感謝祭に家族を招いたようです。ペンシルベニアから父エリックと母ディアドラに連れられた祖母モモ、フィラデルフィアから長女エイミーが訪ねてきます。

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久しぶりに集まった家族が繰り広げる会話劇というと、トレイシー・レッツが脚本を書いた「8月の家族たち」やデプレシャン監督「クリスマス・ストーリー」、フランスの劇作家ジャン=リュック・ラガルスの戯曲を映画化した「たかが世界の終わり」などをこのブログでご紹介してきましたが、本作もこれらと同様、今まで表面化しなかった家族の問題が噴き出して物語が白熱していきます。会話の面白さを楽しむ作品です。

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映画の幕開けで、真っ黒な画面に水色の幾何学模様が現れますが、次第にこれが林立するビルの狭間から見上げた空の映像だとわかってきます。閉塞感のある暮らしの中でときおり見えるほんの僅かな青空。都会の生活を象徴するかのようなタイトルバックです。

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まず父エリックと母ディアドラ、車いすの祖母モモが登場するのですが、エリックとディアドラはこのアパートに次女が住むことに反対のようで、のっけから彼らの住まいをけなします。N.Y.のダウンタウンがいかに危険かという話から、設備の古さに関するあてこすりまで、さんざんな言いようです。

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ブリジッドのパートナーであるリチャード(通称リッチ)は、場をうまく収めようといろいろと気遣います。たとえばエリックに“ずっと学校の仕事をしてきたと聞いている”とか“湖畔の家が大好きだとブリジッドが言っていた”と話しかけ、彼らの地元ペンシルベニアの話題に変えようとするのですが、エリックは今ひとつ乗ってきません。

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そうこうしているうちにエイミーの電話が鳴って、彼女が最近ガールフレンドと別れたこと、腸疾患で休みがちだった法律事務所を辞めることがわかってきます。ガンではないというものの、悪化しないように手術してストーマにしなくてはならないとのこと。そんな体では、新しいガールフレンドもできないと悲嘆します。

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母ディアドラは信心深い人のようで、ブリジッドたちへのプレゼントはキャンディピッグとマリア像です。このキャンディピッグ(商標はPeppermint Pig)なるもの、私は知りませんでしたが、ピンク色のブタ型ペパーミントキャンディで、クリスマスなど家族が集まった際、感謝の言葉とともに付属のミニハンマーで砕いて食べるそうです。

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ブレイク家には昔からキャンディピッグを順番に家族で回して割るしきたりがあったようで早速それを始めます。リチャードはN.Y.育ちとはいえ、アジア系だからか初めての体験のようで、奇妙な慣習だと言いながらも“ブリジッドと出会って新しい家族が得られたことに感謝します”とソツなくこなします。

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この家ではリチャードが料理の担当のようで、ほぼすべての料理を彼が仕込んだり作ったりしていますが、電球の交換など男性向けの家事も担当していて、キッチンと各部屋を行ったり来たり忙しそうです。温厚で誠実なボーイフレンドですが、実は鬱病でブランクがあって、35歳の今も学生です。つまり、リチャードと音楽家を目指してアパレル販売員をしているブリジッドのカップルには収入面の不安があるということ。

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だからこそ、チャイナタウンの老朽化したアパートで暮らしているわけですが、そのボロさを執拗に指摘するエリックに対してブリジッドは、“これが親の支援がなくても暮らせるレベル”と、暗にエリックがお金を出してくれないことをなじります。

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そういった経済面の問題の他、モモの認知症、エイミーの腸疾患、リチャードの鬱といった健康面の問題もあり、そこにエリックが時々みるという悪夢の話が絡んで物語が進んでいくのですが、最後にエリックから“セントマーク校の倫理規定に抵触して失職し、今はダンビル(Danville)のウォルマートで働いている、湖畔の家も売らなくてはいけない”という意表を突く告白があって一気に収束していきます。

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おそらくステージを忠実に映画化したのでしょう。急に電球が切れて暗くなったり、上階や洗濯室から不穏な音が響いてきたりして場面に抑揚をつける演出や、メゾネットの部屋を上下移動しながら展開していく構成に好き嫌いがありそうですが、個人的にはN.Y.らしくてなかなか面白い映画だと思いました。ご覧になればわかる通り、エリックはちょっとした運の巡り合わせで911の犠牲にならなかった人で、彼が抱えるオブセッションがこの物語全体を覆っているのですが、きっとそのあたりがニューヨーカーの共感を得ている理由なのでしょう。

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またエリック役に「シェイプ・オブ・ウォーター」「ナイトメア・アリー」のリチャード・ジェンキンス(Richard Jenkins)、ディアドラ役にジェイン・ハウディシェル(Jayne Houdyshell)、エイミー役にエイミー・シューマー(Amy Schumer)、ブリジッド役に「レディ・バード」「ブックスマート」「ビルド・ア・ガール」のビーニー・フェルドスタイン(Beanie Feldstein)、リチャード役に「ミナリ」の(Steven Yeun)、モモ役に「ネブラスカ」「クーパー家の晩餐会」のジューン・スキッブ(June Squibb)とクセのある役者を集め、6人それぞれの個性が共鳴し合う作りも楽しめました。

公式サイト
ザ・ヒューマンズThe Humans

[仕入れ担当]

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