スペイン

2020年8月22日 (土)

北スペインに想いを馳せて:フランス国境の町オンダビリアで楽しむ路地散歩と創作料理

昨日に続く旅に出たい!シリーズの第3弾も、サン・セバスチャンから行くワンデートリップ。フランスとの国境の町、オンダビリア(Hondarribia)です。ここも、サン・セバスチャンからバスで約30分ほど。バスは頻繁に運行していますし、片道2.5€ほど(2017年時点)ですので、旅行者には嬉しいですね。

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昔ながらのバスク文化が色濃く残る旧市街は、カメラ片手に散策が楽しいところ。

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緩やかな石畳の坂道を昇ったり・・・

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狭い路地に迷い込んでみたり。

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ベランダに飾られた鉢植えの花が目に優しい。

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昔から戦略的重要拠点であったため、町全体が要塞化しました。

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城砦跡に歴史の名残を感じます。

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商店のウィンドウも興味深い。

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バスク帽(=ベレー帽)を被ったバスク豚?

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こちらは、海岸沿いにほど近い通りにある雑貨店。ほとんどのガイドブックに紹介されている有名店です。

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栗の木を使ったバスク籠をはじめ、いろんな生活雑貨があって、雑貨好きな方には堪らないですね。
右手にみえる魚型の道具は、昨日のゲタリアでお話した炭火焼きに使うもの。魚を挟んで焼きます。

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オンダビリアにも目抜き通りにはたくさんのバルが点在していますが・・・

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このとき訪れたのは、裏路地の奥まった場所にある、Danintzat

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カウンター席のカジュアルな雰囲気ですが、気さくなシェフが地元の食材を駆使して作るお料理は独創的。

新鮮なアンチョビは、美味しいだけでなく、見た目も美しく。

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バスク地方の名物「チャングーロ」をDanintzat流にアレンジ。タラバ蟹の身と蟹味噌で作ったパテです。

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日本人も大好きな牛タン!
バナーで軽くあぶってくれるプレゼンテーションつき。

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海の幸も山の幸も楽しめます。

デザートのアイスクリームも芸術的!

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わかりにくい場所にありますが、グーグルマップを頼って、ぜひ行ってみてください。

小高い丘の上にあるのは、映画「スペインは呼んでいる(The Trip to Spain)」の主人公たちが初日に泊まるパラドール・デ・オンダリビア(Parador de Hondarribia)。

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左手に見える要塞のような建物です。
外からは想像できませんが、カルロス五世の古城を改修した、優雅な佇まいのホテルです。機会があれば泊まってみたい!

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パラドール前のアルマ広場から見えるビダソア川の向こう岸はフランスのアンダイエ(Hendye)。

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サン・セバスチャンからも鉄道やバスで簡単にフランスに行けてしまいますので、時間があればフレンチ・バスクを訪れるのもいいですね。

一昨日から3日にわたってご紹介してきた旅に出たい!シリーズ、いかがでしたか? 北スペイン、行きたくなりますよね!次のご旅行の参考になれば嬉しいです。

[仕入れ担当]

2020年8月21日 (金)

北スペインに想いを馳せて:漁港の町 ゲタリアで堪能する海の幸とクチュリエの世界

旅に出たい!シリーズの第2弾は、昨日お話したサン・セバスチャンを拠点にしたワンデートリップ。街の中心からバスで気軽に行ける港町、ゲタリア(Guetaria)を訪れます。下の船に書かれている Getaria はバクス語表記です。

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のんびりとした海岸沿いを走り、約30分ほどで到着。

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バスを降りると地元出身のフアン・セバスティアン・エルカーノ(Juan Sebastián Elcano)の銅像が迎えてくれます。フェルディナンド・マゼランから船団の指揮を引き継ぎ、1522年に史上初となる世界周航を達成した人物だそうです。

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まずお目当ては、美味しいお魚料理。
映画「スペインは呼んでいる(The Trip to Spain)」にも登場したチョコ・ゲタリア(Txoko Getaria)を目指します。

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お昼前に入店すれば大丈夫だと思ったのですが、甘かった。ガラガラに見えるテーブル席はすべて予約で埋まっているとのこと。

とは言え、地産の魚を供するレストランはたくさんあります。こんな風に外で焼く魚の炭火焼(アサドール)が名物です。

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漁港の先にある、地元で評判の Asador Astillero へ。

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テラス席から海を眺めながら食事が楽しめます。

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野菜たっぷり、オリーブいっぱいのサラダからスタート。

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獲れたての大ぶりなハマグリにレモンをかけて。

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エビもシンプルな塩焼きで。

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魚介の出汁が出たスープはとても美味でした。

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と、ここまででお腹いっぱいになり、魚の炭火焼きには到達できず。次回はぜひ獲れたての魚の炭火焼きを楽しんでみたいと思います。

同じ建物の1階にはアンチョビで有名なMaisor(マイソール)があります。お土産にちょうど良い缶詰や瓶詰め、パック詰めもあります。

ゲタリアは微発泡ワインのチャコリが名産で、丘陵にはワイナリーが点在しています。実際、ワイナリーを目指して、バスを途中下車していく観光客も見かけました。こちらは街角に貼られていた各ワイナリーを紹介したポスター。

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そして、ゲタリアへやって来たもうひとつの目的は、クリストバル・バレンシアガ美術館(Cristóbal Balenciaga Museoa)を訪れること。

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映画「ファントム・スレッド(Phantom Thread)」で主演のダニエル・デイ=ルイスが演じたデザイナーのイメージが、このクリストバル・バレンシアガ。ゲタリア出身のスペインが世界に誇るクチュリエです。

小高い丘の上に建つ邸宅 Palacio Aldamar に併設されるように建てられた美術館。

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この邸宅は、貴族の The Marqués and Marquesa of Casa Torres の住居だった建物。バレンシアガの母親が裁縫婦として働いていたそうで、ここの伯爵夫人が、母親の元で技術を習うバレンシアガの才能を見出し、デザイナーになるように勧めて最初の顧客になったそうです。

ファサードと内装を手掛けたのは、バルセロナ拠点の建築家集団 AV62 Arquitectos

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"Lace Magician" と呼ばれるほど、美しいレース使いにも定評があったバレンシアガ。

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そのレースを思われせる花模様のパンチングメタルが内装の雰囲気に優美さを添えています。

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入り口近くのピンクの小部屋の奥では、バレンシアガの歴史とゲタリアとの関わりを紹介する映像を観ることができますので、そちらを先にご覧になることをおすすめします。

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明日は、フランスとの国境の町、オンダビリアのお話です。

[仕入れ担当]

2020年8月20日 (木)

北スペインに想いを馳せて:サン・セバスチャンで心もお腹も満たされる

あ〜、旅に出たい!という渇望感が高まっている方も多いのではないでしょうか。旅は元気の素!早く自由に旅行ができるようになるといいですね。

というわけで、今は行けませんが、次の旅行先の候補におすすめの北スペイン、サン・セバスチャン(San Sebastián)のお話です。

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世界屈指の美食の街。フーディだけでなく飲食関係者にも毎年必ず訪れているという人が少なくありません。

サン・セバスチャンはヨーロッパ有数のリゾート地でもあります。陽光降り注ぐ、緑豊かな街は、昔、王族が夏を過ごした避暑地だっただけあって、優雅な雰囲気です。

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こちらこちらのブログではビルバオのお話をしていますが、そのビルバオからバスで1時間半ほど。車窓からの景色を眺めているとあっというまに到着します。

3年前に私が訪れたときは、ちょうど第65回サン・セバスチャン国際映画祭が開催されていました。

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街中がお祭りムード。

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このブログでも書いていますが、この年、ドノスティア賞という功労賞にはアニエス・ヴァルダ監督と俳優のリカルド・ダリン、モニカ・ベルッチが選ばれています。3人は授賞式に出席するために訪れていたようなのですが、残念ながら街で見かけることはありませんでした。

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お菓子屋さんやお花屋さんなど、ウィンドウも映画祭がテーマ。

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河口沿いに上映作品のビルボードが並びます。手前に見えるのは、楽しみにしていたのに、結局、日本では劇場公開されなかったダーレン・アロノフスキー監督作品「マザー!」

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そしてこちらは、たまたま見かけたアーノルド・シュワルツェネッガー。ファンからサインを求められて、ご満悦な様子。

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後日、パリの展示会でドイツ・ミュンヘンの帽子デザイナー、ニッキ・マーカートに話したら、オクトーバーフェスト(Oktoberfest:世界最大規模のビールの祭典)にも出没していたとか。「カリフォルニア州知事も辞めて、暇なのね」というオチがつきました。

ところで、この賞に冠されている「ドノスティア(Donostia)」ですが、バスク語でサン・セバスチャンのこと。バスの行き先など公共の表示では Donostia が使われることが多いのでお気をつけください。

さて、サン・セバスチャンは歩いてまわれるコンパクトな街です。天気の良い日の夕刻にもなると、ビスケー湾に面したラ・コンチャ海岸のビーチはたくさんの人で賑わっています。

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混雑を避けるなら午前中がおすすめ。

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散歩の途中、ベンチに腰掛けて世間話に興じている地元のご老人。右端の男性のように、サン・セバスチャンをはじめバスク地方では今でもベレー帽(=バスク帽)を被っている男性を良くみかけます。

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美しい弧を描くラ・コンチャ海岸を一望できる丘、モンテ・イゲルド(Monte Igueldo)へ。
この洒落た石造りの建物がモンテ・イゲルドの麓にあるフニクラル(Funicular)の駅舎です。

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フラニクラルとはスペイン語でケーブルカーのこと。100年以上の歴史を持つ木製のケーブルカーで一気に頂上へ。

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天気が良い日の頂上からの眺めは最高です!

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帰りは海を眺めながら歩いて降り、モンテ・イゲルドの麓から海岸沿いの遊歩道を歩いていくと・・・

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地元出身の彫刻家エドゥアルド・チジーダ(Eduardo Chillida Juantegui)の代表的な作品 Wind Comb(風の櫛)にお目にかかれます。波に洗われ、自然と風景に溶け込んでいます。

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美食の街には食に関する専門店もたくさんあります。

老舗の Almacenes Arenzana で購入したこのツゲ(boj)のスパチュラとフライ返しは、堅いのに持った感じが優しくて、とても重宝しています。

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そして、いよいよ夜はお楽しみのバル・ホッピング!

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バルの多くが旧市街に集まっています。
人気のバルには人が入りきれず、外でおしゃべりしながら、飲んだり、食べたり。

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どこのバルもたくさんの人で、一瞬ひるんでしまいそうですが、ぐいぐいっとカウンターまで近づいてオーダーしましょう。

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美味しそうなピンチョスがたくさんありますので、つい1軒で食べ過ぎそうになりますが、他のバルにも行けるように少しずつ。

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魚介類が多いのも日本人好み。

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秋に訪れることがあれば、こちらのブログでもご紹介している Gambara でセップ茸(伊語ではポルチーニ)をご賞味ください。

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ご覧の通り地元の人で混み合っています。

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採れたてのセップ茸のプランチャには生卵を絡めて。絶品です!

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夜の海岸線はロマンチックです。ピンチョスと地元の微発泡酒チョコリでお腹が満たされたら、夕涼みがてら海岸線を散歩するのもいいですね。あちこちでストリートミュージシャンが演奏していたりもします。

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明日は、サン・セバスチャンからバスで30分ほどの港町、ゲタリアのお話です。

[仕入れ担当]

2020年8月17日 (月)

映画「ぶあいそうな手紙(Aos Olhos de Ernesto)」

Aos Olhos de Ernesto ブラジル南部、ウルグアイ国境まで約400kmの町ポルトアレグレ。そこで暮らす78歳の老人の元に届いた一通の手紙から始まる優しさあふれる映画です。原題は"エルネストの目には……"という意味で、視力の衰えで文字を読むこともままならなくなっている主人公エルネストが、新たに経験し、切り拓いていく世界を描いていきます。

普段、新聞などは隣人のハビエルに読んでもらっているのですが、故郷のウルグアイから届いたその手紙は彼に頼みたくありません。なぜならば、同郷の友人の妻であるルシアが送ってきた手紙だったから。

ハビエルはアルゼンチンのブエノサイレス出身。ウルグアイのモンテビデオ出身のエルネストとは国は違えど、ラプラタ川を挟んだ対岸で、同じスペイン語圏ということで親しく付き合っているのでしょう。

また、ブラジルへ渡ってきた理由も重なりそうです。エルネストはポルトアレグレで暮らして46年と言いますので、ウルグアイを出たのは1970年代の軍政状態になった頃。写真家だった頃のエルネストの話からジャーナリズムに関わっていたようですので、おそらく政変で国を出たのでしょう。アルゼンチンではペロン政権からビデラ政権に変わった頃で、どちらの国でも多くの人が故郷を捨てた時代です。

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エルネストは妻を失ってから独り暮らしですが、ハビエルはひとまわり若い妻と暮らしていて、エルネストと違い目は見えても耳がよく聞こえません。大音量でTVを観ていると妻から文句を言われる、独り暮らしのエルネストが羨ましいと口では言いますが、夫婦仲は良いようです。

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エルネストのひとり息子ラミロは、家族と大都市サンパウロに住んでいて、住居を売って近所に引っ越してくるように折に触れて言ってきます。映画の幕開けは、ラミロの手配で住宅購入の下見に来た夫婦を案内している場面。ここを離れたくないエルネストは書斎の鍵を隠して内見させず、ささやかな抵抗を試みます。

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なぜサンパウロに移りたくないのかといえば、いろいろ理由はあるでしょうが、その一つはポルトアレグレではそれなりにスペイン語が通じるからでしょう。玄関先で偶然知り合ったビアは、上階で暮らす老婦人の犬の散歩係をしているという20代の娘で、学歴があるようには見えませんが、ちゃんとスペイン語を解します。通いの家政婦クリスティナも、読み書きは不得意ながら会話はわかるようです。アルゼンチンやウルグアイに近いことから、移民も多く、言語も文化も多様化しているのだと思います。

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手紙の代読をクリスティナに断られたエルネストは、ビアに頼んで読んで貰います。内容はルシアの夫オラシオの訃報で、エルネストとオラシオとルシアの3人が友人同士だったと聞いたビアは、その仲良しの輪から外れたエルネストの思いに興味津々です。つまり、今後のルシアとの関係にドラマを期待しているのです。

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そういった経緯で文通の手助けを引き受けることになるビアですが、彼女自身、いろいろ問題を抱えていて、エルネストは彼女との交流を通じて清濁併せのむことになります。といっても大きな被害を受けることはなく、彼女に触発されて自らの生き方を見つめ直すことで、ルシアとの文通に変化をもたらします。

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エルネストの意固地な物言いだけでなく、互いに毒づき合うハビエルとの応酬や、歯に衣着せぬクリスティナからの忠告など、それぞれのキャラクターからリアリティある愛情が滲み出してきます。登場人物としてはビアのボーイフレンドが唯一の悪役ですが、彼でさえ、根っからの悪人としては描かれていません。どこを取っても温かな気持ちにしてくれる心地よい映画です。

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それを下支えしているのがカエターノ・ヴェローゾの楽曲。ポルトアレグレ出身というアナ・ルイーザ・アゼヴェード(Ana Luiza Azevedo)監督の風景の描き方もほのぼのとしていて良い感じです。映画を観るとこの地に足を踏み入れてみたくなります。

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主人公のエルネストを演じたのは、日本でも公開されたウルグアイ映画「ウィスキー」で弟役だったホルヘ・ボラーニ(Jorge Bolani)。昨年、俳優生活50周年を記念して「バリモア」(ドリュー・バリモアの祖父でもある俳優を描いたウィリアム・ルースの舞台劇)の主役を演じたというウルグアイを代表するベテラン俳優です。

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ハビエル役のホルヘ・デリア(Jorge D'Elía)はブエノサイレス出身の役者で劇作家、ルシア役のグロリア・デマッシ(Gloria Demassi)はウルグアイ出身で長年コメディア・ナシオナルで演じてきた舞台女優だそう。ビアを演じたガブリエラ・ポエステル(Gabriela Poester)は監督が主宰するカサ・デ・テアトロ・デ・ポルトアレグレで演技を学んだ新進女優、ラミロを演じたジュリオ・アンドラーヂ(Júlio Andrade)はポルトアレグレ生まれの中堅俳優だそうです。

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公式サイト
ぶあいそうな手紙Aos Olhos de Ernesto

[仕入れ担当]

2020年8月16日 (日)

映画「プラド美術館 驚異のコレクション(Il Museo del Prado - La corte delle meraviglie)」

Il Museo del Prado マドリードに行った人は必ず訪れるプラド美術館。歴代スペイン王家のコレクションを展示している世界屈指の美術館ですが、あまりにも広すぎて、足早にベラスケス、エル・グレコ、ゴヤなどの有名作品だけ見て、ソフィアやティッセン=ボルネミッサに移動してしまったという方も多いのではないでしょうか。

所蔵作品約2万点の半数以上を常設展示しているそうで、じっくり見たら1日がかりですね。わたし自身、何度も訪れていますが、館内をくまなく歩き回ったことはないと思います。

そんなスペインを代表する美術館を、映画「リスボンに誘われて」ではプラドなる作家を追い求める役を演じていた英国の名優ジェレミー・アイアンズ(Jeremy Irons)の案内で巡るこの作品。92分の小品ですので、当然、とりあげる作品はわずかですが、だからといって一部の作品の解説に終始することもありません。歴史的背景を織り交ぜながら、なぜここが世界屈指の美術館なのか、なぜこのコレクションが人々の心を捉えるのか、さまざまな角度からプラド美術館の魅力を探っていきます。どちらかというと映画館のシートではなく、ゆったりとしたソファでグラスを傾けながらジェレミー・アイアンズの馥郁たる語りにたゆたいたくなる映画です。

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王室コレクションが形を成したカルロス1世からフェリペ2世にかけての時代に始まり、現在の場所に王立美術館を発足させたフェルナンド7世の時代、その妻イサベル2世の退位で美術館が国有化され、プラド美術館と名付けられた時代までを縦横無尽に彷徨いながら、ファン・デル・ウェイデンの"十字架降架"、ティツィアーノの"アダムとイブ"、ゴヤの"黒い絵"シリーズ、ベラスケスの"ラス・メニーナス"、エル・グレコのねじれた人物像、ボスの"快楽の園"といった傑作を見ていきます。

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ティツィアーノ、ジェレミー・アイアンズの発音だとティシャンですが、このイタリア人画家とフェリペ2世の関係から話題がヴェネツィア派に発展したり、修業時代にティツィアーノを模写したというルーベンスに繋がっていったりします。またベラスケスが王室の代理人としてミラノやヴェネツィアに赴き、主にティツィアーノ作品の買い付けに従事していたことなど、イタリアとの繋がりに繰り返し触れられるのは、本作がイタリアの制作会社によるものだからでしょう。これがデビュー作というヴァレリア・パリシ(Valeria Parisi)監督もイタリア人です。

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ジェレミー・アイアンズはサロン・デ・レイノス(El Salón de Reinos)の回廊も案内します。本来なら2016年のコンペで選ばれたノーマン・フォスター卿(Foster + Partners L.T.D.)とカルロス・ルビオ・カルバハル(Rubio Arquitectura S.L.P)の設計で、プラドが200周年を迎えた2019年に改修されているはずの建物。諸般の事情で遅れているようですが、映画にはフォスター卿も登場してプラドへの思いを語っています。

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もちろん、プラド館長のミゲル・ファロミール(Miguel Falomir)、保存修復担当副館長のアンドレス・ウベダ・デ・ロス・コボス(Andrés Úbeda de los Cobos)、映画「マノロ・ブラニク」にも登場していた美術史家マヌエラ・メナ(Manuela Mena)といったプラド美術館関係者の解説もありますし、オルガ・ペリセ(Olga Pericet)のダンスの他、画家アントニオ・サウラの娘で女優のマリーナ・サウラ(Marina Saura)、フェデリコ・ガルシア・ロルカ財団理事長のラウラ・ガルシア・ロルカ(Laura Garcia Lorca)、スペイン国立古典劇団ディレクターのヘレナ・ピメンタ(Helena Pimenta)、写真家のピラル・ペケニョ(Pilar Pequeno)といった著名人のコメントも紹介されます。

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たとえばマリーナ・サウラ。彼女は三人姉妹で、父親アントニオから“三美神”と呼ばれていたそうですが、実際にルーベンスの作品を見たら、なんだか太っててがっかりしたと言っていました。ちなみにこの部分の字幕、gordasを"ふくよか"と訳していましたが、マリーナはあきらかに嫌そうな表情を浮かべていましたし、他でもintensamenteを“密”と訳すべきところ“刺激的”としていて、映像を見ないで訳したのかなと思う場面が何ヶ所かありました。

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それはともかく、全般としては豊かな気分にひたれる作品です。時間と気持ちにゆとりのあるときご覧になるのがお勧め。私もまたプラド美術館に行く機会があれば、その前後に改めて観たいと思っています。

公式サイト
プラド美術館 驚異のコレクションIl Museo del Prado - La corte delle meraviglie

関連:日本で開催されたプラド美術館関連の展覧会のブログ
2018年 国立西洋美術館
2015年 三菱一号館美術館
2011年 国立西洋美術館

[仕入れ担当]

2020年6月22日 (月)

映画「ペイン・アンド・グローリー(Dolor y gloria)」

DolorGloria スペインの名匠ペドロ・アルモドバル(Pedro Almodóvar)の最新作です。このブログでもモナドが開店した2008年以降の公開作は、監督作品である「抱擁のかけら」「私が、生きる肌」「アイム・ソー・エキサイテッド!」「ジュリエッタ」も、プロデュース作品である「人生スイッチ」「エル・クラン」「サマ」「永遠に僕のもの」もすべて取り上げてきましたが、映画好きなら絶対に見逃せない監督の一人でしょう。モナド的には、ヘレナ・ローナー(Helena Rohner)が本作に協力したということで、なおさら見逃せない一本になっています。

自伝的な要素を織り込んだというストーリーはもちろん、色彩あふれる映像も染みいるような音楽も、この監督ならではの味わいに溢れています。画家でいうなら回顧展のような位置づけかも知れません。これで引退してしまうのではないかと心配になるような集大成的な作品です。

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主人公の映画監督サルバドールを演じたのは、前々作「アイム・ソー・エキサイテッド!」とその前作「私が、生きる肌」に出ていた監督の盟友アントニオ・バンデラス(Antonio Banderas)。彼がアルモドバルの分身となり、アルモドバルの苦悩と栄光を断片的に散りばめた物語を紡いでいきます。ちなみに主人公が暮らすギャラリーのような部屋にある美術品や小物は監督の私物だそうです。

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映画の幕開けは瞑想しているかのような表情でプールに沈むサルバドール。水を使った映像はこの監督の大切な要素の一つですが、それが冒頭から登場するわけです。その水の揺らぎが川面に変化し、陽光を浴びながら川岸でシーツを洗う女たちを捉えた場面に繋がっていきます。軽口を叩き合い、陽気に歌いながら、シーツを拡げて干す女たち。ペネロペ・クルス(Penélope Cruz)演じる母親ハシンタに背負われているのが幼い頃のサルバドールです。

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ハシンタの隣でロシータ役を演じているのは人気歌手のロザリア(Rosalía)で、彼女たちが歌っているのは1960年代の映画「El balcón de la luna」の挿入歌「A tu vera」。時代性を示しながら、ペネロペ・クルスの魅力を余すことなく引き出し、今をときめくアーバン・フラメンコ・シンガーの歌声を聴かせるという、一粒で3度おいしいスタートです。

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それに続くマーブル模様を下地に配したタイトルクレジットの美しさもさることながら、サルバドールが偶然に旧友スレマと出会うカフェの壁紙もアルモドバル的です。これはセットでなく、マドリードのホテル、ミゲル・アンヘル(Hotel Miguel Ángel)でロケしたそうで、このあたりはスペインならではのセンスでしょう。このほとんど出番のないスレマを演じたのはアルモドバル作品の常連女優であり、「永遠に僕のもの」で主人公を溺愛する母親を演じてたセシリア・ロス(Cecilia Roth)なのですが、こういうベテランを無駄遣いできるのもアルモドバルならではでしょう。

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物語は、身体の各所に痛みを抱え半ば引退状態にあるサルバドールが過去を振り返るスタイルで展開します。その過去の一つが少年期の60年代、故郷の村を離れて地下住居で暮らした頃。もう一つが、スレマと会ったときに話していた映画監督として栄光に輝いた頃。そしてもう一つ、スレマから連絡先を聞いて、旧作の主演男優に会いにいったことをきっかけに繋がっていく時代で、それぞれがサルバドールの創作物と絡みます。

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サルバドールの少年期、母親ハシンタが夫の母親と折り合いが悪く、一家はパテルナ(Paterna)にある地下住居に引っ越します。サルバドールが近所の塔の階段に腰掛け、駅で拾った「悲しみよこんにちは」を読んでいると、通りかかったカップルの女性、コンチータが、本が読めるなら字も書けるの?だったら手紙の代筆をして!と声をかけてきます。地下住居のボロさを嘆いていたハシンタは、コンチータの恋人エドゥアルドが職人だとわかると、キッチンの改修をしてくれるなら息子が無料で読み書きを教えてあげると持ちかけます。

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そうしてサルバドール少年は、セサル・ビセンテ(César Vicente)演じる美青年エドゥアルドに勉強を教えることになります。彼は文字を知らない代わりに絵心があり、それがエンディングのエピソードに繋がっていくのですが、その思い出を映画化した「El primer deseo(初めての欲望)」が、実は本作「ペイン・アンド・グローリー」でもあるという入れ子の構造になっています。

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もう一つの作品は、サルバドールが映画監督として栄光を極めた時代に撮った「Sabor(風味)」。そのリマスター版の上映会で講演することになり、主演男優のアルベルトを探していたときにスレマと再会したのが冒頭の場面です。サルバドールとアルベルトは撮影中に仲違いし、プレミア上映以来、一度も会っていなかったのですが、この作品を見直してみたところ、改めて会ってみようと思い始めたようです。

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スレマに連絡先を聞いて再会したアルベルトとの関係は、歳月を経ていたこともあり、最初はうまくいきかけます。しかし感情的なしこりが蘇って再び仲違いするのですが、ある事情でサルバドールが折れることになります。その際、舞台劇で再起を図ろうとしてたアルベルトに提供するのが、その昔、一緒に暮らしていた恋人フェデリコとの思い出を題材にした戯曲「Adicción(中毒)」。

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アルベルトはその上演を成功させ、たまたまステージを見たフェデリコが、アルベルトを通じてサルバドールに連絡してきます。そうして過去の様々な出来事、自分の内面でわだかまっていた物事と折り合いをつけていくのですが、その奥底にあるのがサルバドールと母親ハシンタとの関係。大好きな母親の期待に応えられなかった自分という心の痛みを受け入れることが重要なテーマの一つになっています。

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アルベルトを演じたのはTVで活躍しているというアシエル・エチェアンディア(Asier Etxeandia)で、フェデリコを演じたのは「人生スイッチ」のAUDI男レオナルド・スバラーリャ(Leonardo Sbaraglia)。

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その他、晩年の母ハシンタ役で「神経衰弱ぎりぎりの女たち」のフリエタ・セラーノ(Julieta Serrano)、サルバドール少年を神学校に進めようとする敬虔な女性の役で「ジュリエッタ」のスシ・サンチェス(Susi Sánchez)、サルバドール少年の父親役で「アイム・ソー・エキサイテッド!」「マーシュランド」のラウール・アレバロ(Raúl Arévalo)、サルバドールの友人兼秘書メルセデス役で「ブラック・ブレッド」で主人公の母親を演じていたノラ・ナバス(Nora Navas)が出ています。

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ちょっとわかりにくいのですが、ノラ・ナバスが着けているアクセサリーがヘレナ・ローナーの作品です。

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公式サイト
ペイン・アンド・グローリーPain and Glory

[仕入れ担当]

2019年11月19日 (火)

ラテンビート映画祭「猿(Monos)」

monos 南米コロンビアの山岳地帯を舞台にした作品です。アレハンドロ・ランデス(Alejandro Landes)監督の2007年の「コカレロ」、2011年の「Porfirio」に続く3作目。「コカレロ」はボリビアで撮ったドキュメンタリー作品でしたが、「Porfirio」は本作と同じく、監督のルーツでもあるコロンビアで撮った劇映画だそうです。

ストーリーそのものはシンプルなものですが、撮影技術と映像の迫力には目を見張るものがあります。夜間の炎だけで撮影されたシーンの美しさもさることながら、ジャングルを駆け巡るシーンや激流に巻き込まれるシーンなど、あり得ないようなカメラワークが随所に見られます。また、設定やキャスティングに細かい仕掛けがあり、後で得心したり、考え込んでしまったり、ある種の深みを感じさせてくれる作品です。

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タイトルの猿(Monos)というのは、映画の主役である8人の少年少女たちのコードネーム。映画の序盤で、楽しげにブラインドサッカーのようなゲームに興じる子どもたちが映りますので、彼らの夏休みを描いた映画と勘違いしそうになりますが、この子どもたちは反政府ゲリラで、身代金目的で人質にした白人女性を見張るという任務を帯びています。

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ときおり、[伝令](Mensajero)と呼ばれる上司が来ては、彼らに厳しい肉体トレーニングを課し、人質のビデオを撮って帰りますが、それ以外のときは、自主的な訓練をしたり、普通の子どものように遊んだりして過ごしているようです。8人のゲリラの構成は、リーダーの[狼](Lobo)、2番手の[ビッグフット](Patagrande)、[ランボー](Rambo)、[犬](Perro)、[スマーフ](Pitufo)、[ブンブン](Boom Boom)と呼ばれる男子6人と、[レディ](Leidi)、[スウェーデン](Sueca)と呼ばれる女子2人。人質の本名はサラ・ワトソンですが、ここでは[博士](Doctora)と呼ばれています。

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ある日のトレーニングの後、[伝令]に対し、[狼]と[レディ]が“男女の関係”の許可を申請します。彼らの組織や規律がどうなっているのかわかりませんが、あっさり許可が出て、その後、全員で2人のためのベッドを作ってあげたりします。

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また[伝令]は帰り際に一頭の乳牛を託していきます。[シャキーラ]という名前(コロンビアの至宝ですね)のその牛は支援者から借りているものなので、ミルクを絞って大事に飼育するようにという指示。人里離れた山奥(ロケ地はチンガサ国立公園)で暮らすゲリラにとって、食糧は何より大切ですし、反政府ゲリラにとって支援者は政治的生命線です。

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[狼]と[レディ]の結婚祝いでしょうか。全員で酒を飲み、彼らが酔っ払って騒いでいる最中に、[犬]が誤って[シャキーラ]を射殺してしまいます。とりあえず、地面に独房代わりの穴を掘って[犬]を入れ、解体した牛肉をみんなで分け合って食べますが、問題は[伝令]への報告です。みんなが頭を悩ましている傍らで、責任を感じたリーダーの[狼]が銃で自殺してしまいます。

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そこで残った7人は、話し合いの末、[狼]が[シャキーラ]を殺して自殺したと報告することに決めます。[犬]を守るためとはいえ、忠誠を誓っている組織を欺すわけですから、心中穏やかではありません。結果的にはその嘘がうまく通じ、新たなリーダーとして[ビッグフット]が任命されます。

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その後、彼らの基地が攻撃を受け、人質を別の場所に移送するように命令されます。ジャングルの中(ロケ地はサマナ・ノルテ川沿い)を移動するわけですが、その途中の野営地で[博士]が逃走します。結局、[博士]は確保されるのですが、これをきっかけに、組織への嘘でくすぶっていたグループ内の意識のズレが表面化していき、次々と問題が生じていくことになります。

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冒頭に記したように、素晴らしい映像と音響、緊張感ある展開で楽しませてくれる作品ですが、惜しむらくはこれがラテンビート映画祭での特別上映であること。サンダンス映画祭はじめいくつかの賞を受賞していますので、そのうちDVDやBDでリリースされるかもしれませんが、やはり映画館の大スクリーンで集中してみないと堪能できないのではないかと思います。

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出演者で知名度があるのは、おそらく人質の[博士]を演じたジュリアンヌ・ニコルソン(Julianne Nicholson)だけでしょう。「8月の家族たち」で次女、「ブラック・スキャンダル」でコノリーの妻、「アイ、トーニャ」でコーチでを演じていた米国人女優です。

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ゲリラ役の少年少女たちはオーディションで選ばれた素人だそうですが、ちょっとネタバレしてしまうと、坊主頭の[ランボー]を演じたのはソフィア・ブエナヴェントゥーラ(Sofia Buenaventura)という女性で、2019年8月のインタビュー時はサンティアゴ・デ・カリ在住でバジェ大学(Universidad del Valle)に通う学生だと紹介されていました。もし映画で設定された役柄が男の子のように振る舞う女の子だとすると、途中のキスシーンや印象的なエンディングなどさまざまな場面の意味合いが違ってくると思います。

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公式サイト
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[仕入れ担当]

2019年11月18日 (月)

ラテンビート映画祭「蜘蛛(Araña)」

Spider 反政府デモが続き、この12月に予定されていたAPECとCOP25の開催を断念したチリ。デモが激化したきっかけは地下鉄運賃値上げだと伝えられていますが、そもそもの元凶は、富裕層が支持する右派と大衆が支持する左派が拮抗し続けるこの国の政情にあります。

近年の政権を時系列で並べると、2006年から2010年は親の代からアジェンデ派の社会主義者ミシェル・バチェレ、2010年から2014年は大富豪で反共のアルセバスティアン・ピニェラ、2014年から2018年は再びバチェレ、そして2018年にピニェラが返り咲いています。アジェンデの社会主義政権を倒した1973年から軍事独裁を続けてきたピノチェトの90年の辞任以降、中道と左派による政権運営が行われていたところで大きく右に振れたのですから、左派の不満も想像に難くありません。

本作「蜘蛛」の主人公たちは、70年代にアジェンデ政権を倒そうと暗躍した極右民族主義者の仲間。映画のタイトルは彼らの組織“PyL:Frente Nacionalista Patria y Libertad(≒祖国と自由・民族戦線)”のマークが蜘蛛に似ていることと、蜘蛛の糸に絡みとられていくイメージを掛け合わせたものだと思います。

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彼らが思い描いたとおりにピノチェト政権に移行するわけですが、もともとブルジョワ家庭の出身者だった彼らは、政権と癒着することでさらに富を蓄えます。若い頃に行ったテロ活動の数々は闇に葬り、実業家や専門職として高い社会的地位を築いています。

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あれから40年という設定ですから、おそらく2010年代前半、ピニェラ政権の頃でしょう。主人公のイネスは企業のトップにつき、彼女の夫スフトは経営していた弁護士事務所を息子に譲って隠居の身です。家政婦を雇い、プール付きの邸宅で暮らす彼らは、特権階級を絵に描いたようなようなライフスタイルを謳歌しています。

そんなある日、路上で女性のバッグを引ったくった犯人を、初老の男が車で追い詰めて殺してしまうという事件が起きます。市民による正義の制裁として新聞に大きく取り上げられるのですが、その犯人の顔をみたイネスとスフトは驚愕。なぜならば、その男は40年前に姿をくらました仲間のヘラルドだったからです。

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美貌の誉れ高かったイネスは1981年の美人コンテストで優勝します。その写真撮影をしたカメラマンのアシスタントだったのがヘラルド。彼はカメラマンの態度に立腹し、いきなり暴力を振るって馘になってしまいます。

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イネスとスフトは既に結婚しており、小さな子どもがありながらも社会主義政権の打倒に燃えていて、血気盛んなヘラルドを自分たちのテロ活動に呼び込みます。そして3人の不思議な関係が始まるのですが、なぜ不思議かというと、イネスとスフトはブルジョワ家庭の出身、対するヘラルドは若くして空軍に入隊した庶民の出身で、普通なら交差するはずのない人生だからです。

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そこでポイントになるのがイネスの持ち前の性格でしょう。美人コンテストのインタビューで“自分の身体でどこが変えたいところがあるか”と訊かれて、“全部”と答え、不思議がるインタビューアーに“男になりたかった”と説明するイネス。見目麗しい女性でありながら、強さに対する憧れがひと一倍強いのです。それは映画の冒頭で孫のサッカーに付き添う場面から、会議室の男性陣を睥睨し"maricones(≒ヘナチョコども)"と言い放つ場面まで、さまざまな言動に現れます。

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イネスとスフトは同じ社会階層だからこそ結びついているわけですが、ヘラルドとの結びつきは彼の暴力性。イネスは野性的な強さをもつヘラルドに強く惹かれていきます。もちろんヘラルドも、美しく情熱的なイネスに惹かれます。この三角関係によって政治活動に私情が挟まれ、結果的にヘラルドが姿を消すことになるのですが、40年後の彼の出現で過去の記憶が蘇ってくるわけです。既にPyLが存在しないとはいえ、世の中は右傾化しつつあり、ネオナチのような極右グループも台頭しています。本作では現代のチリ社会におけるハイチ移民の扱いなどを交えながら、極右民族主義者たちの過去と現在を描いていきます。

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この映画の第一の見どころはイネスを演じた2人の女優。若い頃をスペイン出身のマリア・バルベルデ(María Valverde)、その40年後を「ローマ法王になる日まで」「ネルーダ」「永遠に僕のもの」などで知られるアルゼンチンの名優メルセデス・モラン(Mercedes Morán)が演じているのですが、二人ともとても魅力的で、その美しさと強さに男たちが惑わされていく様子が違和感なく伝えられます。

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そして第二の見どころは巧みなストーリー展開。過去の因縁が蘇るというよくある物語を、家族の問題や世相の変化をうまく取り込んでスリリングに進めていきます。マリア・バルベルデやメルセデス・モランの演技力のおかげもあり、ぐんぐん引き込まれていくと思います。

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監督はチリ出身のアンドレス・ウッド(Andrés Wood)。メインの女優以外はチリの俳優が多く出演していて、若いヘラルドをペドロ・フォンテーヌ(Pedro Fontaine)、老いてからを「ザ・クラブ」「ネルーダ」に出ていたマルセロ・アロンソ(Marcelo Alonso)、若いスフトをガブリエル・ウルスア(Gabriel Urzúa)、老いてからをフェリペ・アルマス(Felipe Armas)が演じています。

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公式サイト
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[仕入れ担当]

2019年11月15日 (金)

映画「スペインは呼んでいる(The Trip to Spain)」

triptospain 4年前に日本公開された「イタリアは呼んでいる」の続編です。前作と同じく、マイケル・ウィンターボトム(Michael Winterbottom)監督が手がけたTVシリーズの映画化で、俳優で脚本家のスティーブ・クーガン(Steve Coogan)とコメディアンで司会者のロブ・ブライドン(Rob Brydon)がグルメ旅に出かけるバディムービーです。

前作同様、笑いのツボが英国ローカルであること、その笑いのネタが2人のモノマネであることには要注意です。英国の時事ネタと彼らがマネする有名人の口癖を知らないと、まったく笑えない事態に陥ります。また本作では、スティーブ・クーガンがアカデミー賞の作品賞と脚色賞にノミネートされた「あなたを抱きしめる日まで」に絡めたネタが散りばめられていますので、この映画を観ていないと意味不明な部分が多々あるかと思います。

ということで、コメディとしては観客を選ぶ微妙な作品ですが、旅行番組としては風光明媚な景色と地方色豊かな美食で楽しませてくれるストレートな作り。中年男性2人のミッドライフ・クライシスにまつわる軽口を聞きながら、ひとときの旅行気分に浸れます。

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今回の目的地はスペインで、英国プリマス(Plymouth)港から海路でサンタンデール(Santander)に渡り、イベリア半島をマラガまで縦断します。前作の車はミニクーパーでしたが、今回はロンドンから持ち込んだ右ハンドルのレンジローバー。調べてみたら、ブルターニュ・フェリーズ(Brittany Ferries)が夕方出航して正午に到着するカーフェリーを夏期だけ運行しているようです。

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スペイン最初の食事はチョコ・ゲタリア(Txoko Getaria)で。

ゲタリアは漁港を中心とした小さな町で、アンチョビと近郊で作られるチャコリという微発砲のワインが有名。クリストバル・バレンシアガの出身地であり、彼の仕事を紹介した美術館もあります。サンタンデールからだと、ビルバオを抜けて2時間ほどかかりますので、やや遅めのランチという感じでしょうか。チョコは漁港を見下ろすように何軒か並ぶシーフードレストランの一つで(このブログブーツの写真はチョコの前から漁港に向けて撮ったものです)、スティーブとロブはこの店で鰯のプランチャ(鉄板焼き)や舌平目のグリルなどを食べます。

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初日の宿はパラドール・デ・オンダリビア(Parador de Hondarribia)。ゲタリアからサン・セバスティアンを通り過ぎてフランス国境を越える直前にある町、オンダリビアのパラドールです。ナバラ王国の要塞を使った建物で、エントランス側の小さな広場から見ると窓がないレンガ壁が大きくそびえ立ち、かなりの威圧感があります。ちなみに町の川向こうにあるアンダイエは「戦争のさなかで」のミゲル・デ・ウナムーノがフランス亡命中に暮らした町です。

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2日目の食事はアサドール・エチェバリ(Asador Etxebarri)。ビルバオから1時間かかる山奥にあるというのに、日本人を含むフーディたちがこぞって押しかける超有名店ですね。アサドールというのは薪や炭でグリルすることで、英語ではバーベキューという味気ない表現になってしまいますが、直火に意義を見出しているレストランです。ここで彼らは自家製のモッツァレラと山羊のバター(life-affirming butter=人生を肯定するバター!)、チョリソと玉蜀黍のクロケット、ムール貝の人参ジュース添え、骨付き肉のステーキ(Chuleta de res)、スモークドミルクのアイスクリームなどを食べます。そしてサラゴサ(Zaragoza)まで約300Km移動し、宿泊はパラドール・デ・ソス・デル・レイ・カトリコ(Parador de Sos del Rey Catolico)。

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スペインのグルメトリップといえば、更に東に向かい、カタルーニャで食べ歩くのが王道ですが、3日目の昼食は同じ道を途中まで引き返すかたちでリオハのラ・ポサダ・デル・ラウレル(La Posada del Laurel)に行き、赤ピーマンのプランチャ、ラムチョップなどを食べます。途中でエンシソの恐竜遺跡(Yacimientos de icnitas de Enciso)に立ち寄って記念撮影してましたね。

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本作は2017年4月にTV放映されたものですので、おそらく撮影の時点でプチダモンによるその後の混乱が予測できたのでしょう。グルメをテーマにしながらも美食の宝庫ジローナなど、カタルーニャ地方には一切触れていません。旅の途中でストリートミュージシャンと出会い、スティ−ブが“あのローリー・リー(Laurie Lee)も音楽で稼ぎながら旅をしていた”と言ってビールを奢ってあげるのですが、その若い英国人のお勧めはカタルーニャとバレンシアでした。確かバレンシアのカサ・モンターニャ(Casa Montaña)という店を挙げていたと思います。下の写真はローリー・リーの"As I Walked Out One Midsummer Morning"(邦訳は「スペイン放浪記―ある夏の朝、ふと旅に出て」または「アルフの旅」)とスティーブ。

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そしてマドリード方面に向かい、その晩の宿はパラドール・デ・シグエンサ(Parador De Siguenza)。4日目の昼食はパラドールから歩いてすぐのノーラ(Nöla)で骨付きラムのクスクス添えなどを食べ、夜は200Kmほど南下してパラドール・デ・クエンカ(Parador de Cuenca)に泊まります。私は行ったことがないのですが、クエンカも良さそうな町ですね。

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さらに南下し、5日目の食事はパラドール・デ・アルマグロ(Parador de Almagro)。そしてその晩の宿はパラドール・デ・グラナダ(Parador de Granada)。以前、このブログでもここの食事をご紹介していますが、アンダルシアに行くなら翌日の宿泊先であるパラドール・デ・マラガ・ヒブラルファロ(Parador de Málaga Gibralfaro)と併せて泊まりたい、スペインを代表するパラドールの一つです。前後してしまいましたが、最終日の昼食はマラガのエル・レフェクトリウム(El Refectorium)でポテトサラダや海老を食べていました。

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行き先のご紹介ばかりで内容に触れず仕舞いになってしまいましたが、本作のテーマはミッドライフ・クライシスですので、50代の二人(実際は同年齢ですが映画の設定ではスティーブが51歳、ボブが56歳)が、いつの間にか自らが置かれている立場が変化し、それに気付いて悩む様子が描かれていきます。もちろんこのサイドストーリーは創作ですので、それぞれの家族の設定も次回作の話題もフィクションです。

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スペインは呼んでいる

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2019年11月12日 (火)

ラテンビート映画祭「列車旅行のすすめ(Ventajas de viajar en tren)」

ventajasサン・セバスティアン出身のアリツ・モレノ(Aritz Moreno)監督の初長編作品です。サイコ風味のブラックコメディといえば良いのでしょうか。展開はハチャメチャで、風変わりなロマンスがあればエログロの要素もありというジャンル分け不能な映画。ある意味、スペイン映画らしい作品といえるでしょう。

原作はアントニオ・オレフド(Antonio Orejudo)が2000年に刊行した同名小説。本作に原作があるだけでも驚きですが、このとぼけたタイトル(直訳すると、列車で旅する利点)と無茶苦茶な内容でベストセラーになったというのですから驚愕です。オレフドは1963年マドリード生まれ。マドリード自治大学(UAM)卒業後、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校で博士号を取得し、アムステルダム等での教職を経てアルメリア大学の教授に就任した人だそうです。

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さて、映画の内容はといえば、夫をスペイン北部の精神病院に入院させて列車で帰路についた編集者のエルガ・パトが、精神科医だという男性と向かい合わせの座席になり、彼の患者が語ったという話を聞いてしまったのがそもそもの始まり。アンヘル・サナグスティンと名乗るその男は、あなたのことを病院で見かけた、自分の診療方針は患者に自分の話を書かせることだが、少し聞きたくないか?と語りかけます。

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最初の一編は、父親の希望に応えて軍に入隊したマルティンという男がコソボの病院に派兵され、世の中のダークサイドを見ることになるというもの。一言でいえば子どもの人身売買なのですが、その一件を上官に訴えたところ、誰も真に受けてくれなくて、問題を抱えた兵士という扱いで除隊させられることになります。

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そうして帰還し、ゴミ収集車の作業員をしている兄のことを心配した妹アメリアから、新居のゴミ問題で難儀していたアンヘルのところに手紙が届いたと話が続いていきます。

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ところが、途中駅で食事を買いに降りたアンヘルを乗せず列車が出発してしまい、残されたのは患者の話を集めたという赤いファイルのみ。エルガはそれを返そうと、後々アンヘルを探すことになるのですが、ここで一旦、話が切り替わって、彼女が夫のエミリオを精神病院に送り込むことになった経緯が綴られます。

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エルガの男性運の悪さを見せていくと思わせながら、どんどん異常な世界に入り込んでいきますのでご用心。この手のスペイン映画に慣れていない方はギョッとするかも知れません。

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それと並行して赤いファイルに記されていたというガラテとロサの話が描かれます。これは遺伝子異常で極端な長躯とフニャフニャな身体を持つ男性と片脚の短い女性がパリで繰り広げるロマンスなのですが、ガラテ役はマルファン症候群の男優ハビエル・ボテット(Javier Botet)、ロサ役は「ブランカニエベス」のマカレナ・ガルシア(Macarena Garca)という妙に力の入ったキャスティングの割に、オチはくだらないし、他のストーリーとの関連性が見えてこないし、不思議なパートです。

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ということで、エルガとエミリオの異常な世界、アンヘルとマルティンの妄想が入り交じった世界、ガラテとロサの脈絡のない世界が、微妙なバランスを取りながら入れ子になっていきます。ストーリーを説明するとネタバレになってしまうというより、説明すること自体が困難な作品ですので、ご覧になっていただくしかありません。ハチャメチャなスペイン映画がお好きな方にお勧めです。

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物語の軸となる編集者の女性エルガ役は「ジュリエッタ」のピラール・カストロ(Pilar Castro)、その夫エミリオ役は「アブラカダブラ」に出ていたというキム・グティエレス(Quim Gutiérrez)、列車の男アンヘル役でエルネスト・アルテリオ(Ernesto Alterio)、帰還兵マルティン役で「雨さえも」「エル・ニーニョ」などの人気俳優ルイス・トサール(Luis Tosar)、妹アメリア役でベレン・クエスタ(Belén Cuesta)、mentira!と叫んでテーブルを割る父親役で「誰もがそれを知っている」の不機嫌な老父ラモン・バレラ(Ramón Barea)が出ています。

[仕入れ担当]

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